祖母の背中
いつも元気で、鼻歌を歌いながら家事をしていた祖母が82歳の夏に旅立ってしまった。
離れて暮らしていた私が帰省すると、
『結婚はまだか?』と毎度迫る祖母でした。
ついに結婚の報告をすると、『よかった、よかった』と、うれしそうに笑う祖母がとても愛おしかった。
夫と私が入籍したわずか10日後に祖母は逝きました。
生きているうちに入籍できて、本当によかった。
私は形見分けに財布と革製の指抜きを2ついただいた。
10年以上は使っていたであろう年季の入った黒い二つ折の財布には、
診察券数枚とスーパーのポイントカードと
名刺2枚分程の大きさのメモ紙が入っていた。
メモには12人の名前と電話番号がぎっしりと書かれていた。
携帯電話を持っていなかった祖母は、家族や親類の携帯番号を財布に入れて持ち歩いていたのだ。
それらの名前を見てみると、娘、息子、私の父母、妹、友人など、祖母にとって本当に大切な人(欠くことのできない人々)記されていた。
そこに自分の名前があったことが、とても幸せであたたかい気持ちになった。
私が幼い頃、我が家は人の出入りが激しく、
学校から帰れば必ず誰かご近所さんがいたし、盆暮れ正月には親戚中が大集合。
みんな祖母が引き寄せたのだなぁ。
祖母は、みんなに愛されていたのだなぁ。
祖母が亡くなってからもう11年。
今でも時々無性に会いたくなる時があります。
肩を揉んであげるから、話を聞いてよと言いたくなる時があります。
祖母はあまりモノを持たなかったし、
むやみにモノを捨てなかった。
モノを大切にしていたけれど、
モノに執着はしていなかった。
祖母にとって大切だったのは、モノではなくて人だったのだなと、
今になってしみじみと思う。
祖母の背中は遠くに行ってしまったけれど、今でもとびきり大きく見える。
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